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第一話 「里の案内人」

 

見渡す限り、森。
どうやら、迷ってしまったようだ。

あき

「どうしよう・・・帰り道、わかんなくなっちゃった」

少女は怖くて泣き出しそうになった。



すると、誰かが来た。

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ルシア

「もしかして、迷ってますか?」

あき

「あ・・・はい」

ルシア

「それはお困りですね・・・。では、私が案内しましょう。
 ただ森をやみくもに歩くだけでは、この夢幻里からは出られませんから」

あき

「むげん・・ざと?」

ルシア

「ここは悪い意味で人間が大好きな連中がいっぱいいるんです。さぁ、行きましょう」

あき

「あ、あの・・・。私、あきっていいます。あなたは?」

ルシア

「ルシアと申します。里はそれなりに詳しいので、お役に立てると思います」

あき

「ルシアさん・・・。ありがとうございます!」

ルシア

「あ、呼び捨てで結構ですよ。敬語も使わなくていいですし。
 私は癖でこういう話し方してるだけですが、聞く身になると敬語って退屈ですから」

あき

「わ・・・わかり、いや、わかったよ、ルシア」


ルシア

「どうして、こんなところにいたんですか?」

あき

「・・・私、お母さんが病気で、病院で薬をもらってたの。
 でも、帰り道、森で光る蝶々を見つけて、追っかけてたら・・・」

ルシア

「迷っちゃったんですね・・・。好奇心は、時には危険も呼びますからね」

あき

「早く帰らないと、お母さん、薬が飲めなくて死んじゃう!」

ルシア

「え!?そんなに重い病気なのですか?」

あき

「うん・・・。だってお母さん、薬を飲み忘れたら死んじゃうって、毎日言ってたもん」

ルシア

「そうですか・・・。でも、帰る前にどうしてもやらなければいけないことがあります」

あき

「やらなければいけないこと?」

ルシア

「あなたは、呪いがかかってます。それを祓ってから里を出ないと、
 人間界に戻った時、あなたこそ治らない病気にかかってしまいます。

 それも・・・・・一生」

あき

「そ・・・そんな!え・・あ、人間界って?」

ルシア

「あなたが住んでいるところです。ここは人間界ではないのです。

 人でないものがたくさん住んでいますから・・」

あき

「ルシアさんも?」

ルシア

「私は人間ですよ、安心してください」

あき

「よかった・・・。でも呪いって、何なの?」

ルシア

「妖怪や悪魔が、里に迷い込んだ人間を狙ってかけてくるんですよ。
 当人達は暇つぶしや遊びのつもりでやっているのですが・・・。

 人間にとっては遊びでは済みません」

あき

「私、悪魔なんかに襲われてないよ?」

ルシア

「奴らは、姿を消せますから」

あき

「そうなんだ・・・。もしかしてルシアは、今までここに迷った人達を助けてくれたの?」

ルシア

「無事帰れるために、お手伝いはしてますよ。それが私の生きがいですから」

あき

「ありがとう・・・!それで、これからどこへ行けばいいの?」

ルシア

「呪いを解くには、”よすがの遺跡”に行かなければなりません。では、行きましょう」




こうして、少女の帰り道は始まった。

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