top of page
第三話 「ティア」

 

長い長い道のり。あたり一面、紫陽花でいっぱいだ。
少女は最初は綺麗だと喜んでいたが、進めば進むほど、その光景が飽きるものになり、ついには母の事で不安になってきた。


あき

「早く帰らないと、お母さんが・・・」

ルシア

「あきさん。そのセリフは、もう50回ほど聞きました・・」

あき

「いつ、つくの?遺跡は、まだ!?」

ルシア

もうすぐですよ。あと2時間ほどで遺跡につきます」

あき

「二時間も!?そんなに待てないよッ!!」

ルシア

「あ!あきさん!!」


少女は走り出す。

道はルシアしか知らないのは分かっていたが、気持ちが焦るばかりでどうしようもなかった。
ルシアも追いかけるが、雨で視界が悪く、途中で見失ってしまった。





あき

「はぁはぁ・・もしかして、迷っちゃった・・?
 ・・・また・・・やっちゃった・・・。
 ルシアの言う事をちゃんと聞いてれば、落ち着いてれば、こんな事にならなかったのに。

 ばかばかっ!」

 

「うるさいわね!!私の楽しみを邪魔するのは、誰よ?」

あき

「え?あ、あの。どなたですか?」
 

「せっかく綺麗な水しぶきの音を聞いていたのに!あんたのせいで台無しよ!!」


精霊はハープを乱暴に弾き、地震を起こす。
もう立ってられない!おまけに酔う!!

 

10.jpg

 

あき

「ご、ごめんなさぁい!!」
 

ティア

「あんたのその音、嫌いなの!!すぐに止めてよ!!」

あき

「お、音って、何のこと!?」
 

​ティア

「そのざわざわした醜い音・・人間風に言うと、心臓ってところかしら?」

あき

「あ・・・心の、音?」
 

​ティア

「私、その音大ッッッ嫌いなの!なんでこうも不幸を呼ぶような音をするわけっ!?

 せめてマシな音にしなさいよっ!!」

あき

「そ、そんな事言われたって・・・」


マシな音・・とりあえず落ち着くこと?
少女は、目を閉じて雨の音をじっくり聞いた。


心が落ち着いてきた。


 

​ティア

「へぇ、だいぶマシになったじゃない」

あき

「そ、それはどうも・・・」
 

​ティア

「ああそういえば、人間の音で唯一好みなのがあったわ。
 私、この前たまたま湖で人間と妖精が水鉄砲して遊んでるところを見たんだけど」


ルシアの事だろうか・・・?

それにしても、この前って・・・確か50年前の出来事だったはず・・・。
どうも妖精や精霊の時間の感覚は、人間と全然違うらしい。


 

​ティア

「その時の人間の音がよかったのよ。こう、わくわくするところ?」

あき

(楽しい気持ちかなぁ・・・)
 

​ティア

「だからあんたも人間なら、その音を聞かせなさい。私の趣味を邪魔したお詫びとして」

あき

「・・・じゃあ、一緒に遊んでくれる?」



ルシアが少女を見つけた時は、先ほどの少女とは思えないくらい、楽しそうに精霊と遊んでいた。

bottom of page