第四話 「迷夢」
やっと、「よすがの遺跡」に辿り着いた。
あき
「やっとついた~!!!」
ルシア
「安心するのはまだ早いですよ、あきさん。これから呪いを解かないと・・・。
魔法陣を張りますので、そこに立って下さい」
あき
「うん」
魔法陣の上に少女は立つ。
ルシアは呪いを解く呪文を唱えた。
あき
「・・・これで呪いは解けたの?」
ルシア
「解く準備はできました。あとはあきさん、貴方の力次第です」
あき
「え、どういうこと??」
ルシア
「弱い妖怪や悪魔の呪いなら私でも解けるのですが・・・。
あきさんにかかった呪いは強力なもので、どんなものか分かりません。
私は、呪いを解くためのお手伝いしかできないんです。
最終的には、貴方でないと解けません・・・」
あき
「そうなんだ・・・。でもありがとう、ルシア。
私、頑張って解くから!でも・・どうすればいいの?」
ルシア
「あの道をまっすぐ行ってください。必ず里を出て、あきさんの知ってる道に辿り着けます。
ただ・・・ここから先はあきさん一人で行くのです。
私は里を離れるわけにはいかないので・・・」
あき
「わかった。ルシア、いろいろありがとう!これで・・・お別れなんだね」
ルシア
「はい。私、あきさんとご一緒できて、楽しかったです」
あき
「私も楽しかった!ルシアがいないと、何もできなかったもん。ルシアは、大切なお友達だよ」
ルシア
「私も、あきさんは大切なお友達です」
あき
「・・・それじゃ、私、行くね。」
ルシア
「あ・・・あきさん!」
あき
「え?」
ルシア
「これから何があっても・・・
これまで出会ってきた妖精や精霊達が言ってた事を、忘れないでください」
あき
「・・・わかった。ルシア、バイバイ!」

ルシア「さようなら、あきさん・・・」
どのくらい、歩いただろう。
あたりは森で、雨がまた強く降ってきた。
さっきからずっと付きまとってる悪魔が、少女に語りかけた。
「もう帰るの?もっと里で遊ぼうよ」
あき
「・・・ダメ。帰らなきゃ。お母さんが待ってる」
「どうせ帰っても、お母さんは死んでるよ。あれからもう、随分経ってるから」
あき
「そんなこと、ない・・」

悪魔は、大鎌の鍵盤で悲しいメロディを少女に聴かせた。
少女は耳をふさぐが、雨の音だけが聞こえなくなるだけで、悲しいメロディと悪魔の声は聞こえた。
迷夢
「鞄は、どうしたの?」
あき
「え?」
迷夢
「お母さんの薬が入ってる鞄。ずっと大事に持ってたでしょ」
あき
「・・・!!!さっきまで、しっかり持っていたのに!!」
迷夢
「きっと落としちゃったんだね。やっぱり帰ってもお母さんは死んじゃうね」
あき
「探さなきゃ・・・」
迷夢
「まっすぐ行かないと、人間界に戻れないよ?
ここは里と人間界の堺だから、一歩でも間違った行動をすると君は永遠に迷子になる」
あき
「そんな・・・」
迷夢
「僕と一緒に行こうよ。そうすれば、里に戻れる。薬を探せるよ」
あき
「・・・・・・」
少女は、立ち止まった。
もうどうすればいいのかわからなくなっていた。
悪魔は、何度も悲しいメロディを聴かせ、何度もささやいてくる。
少女は、目を閉じた。
それと、耳をふさぐのをやめた。
雨の音が、しとしと聞こえる。悲しいメロディが気にならなくなる。
心が落ち着いてくる。
少女は、楽しいことを考える。
ふと、帰ったら、お母さんと遊園地に行く約束をしていたのを思い出した。
あき
(そう、約束したんだ。お母さんの風邪が治ったら、お父さんも連れて遊園地に行こうって・・・。あれ?
お母さんって、確か風邪をひいてたんじゃなかったっけ・・・?
それで、私が病院で薬を貰って帰って・・・)
少女は、ルシアが言ってた呪いの事を思い出した。
迷夢
「どうしたの?ほら、早く行こうよ」
あき
「・・よくも騙したな!」
迷夢
「何の事?なんで怒ってるの?」
あき
「お母さんは、重い病気なんかかかってない!ただ風邪をひいてただけ!
それをあんたは、呪いで重い病気にかかったと、私に思い込ませたんだ!!」
迷夢
「嘘じゃなよ。本当に重い病気なんだよ~」
あき
「誰が悪魔の言う事なんか信じるかっ!!」
少女は、悪魔をふりはらって、ひたすらまっすぐ走り続けた。
ふと、気が付いたら、いつもの見慣れた帰り道にいた。
足元には、病院でもらった薬を入れた鞄が落ちていた。
あき
「ありがとう。ルシア、雫さん、ティアさん・・・」
少女は嬉しくて涙を流しながら、家に向かった。
家に帰ると、風邪気味の母が「お帰りなさい。ちょっと遅かったね?」と心配そうに迎えてくれた。